お客様の会社の事業をグローバルに拡大する場合、それは会社の未来にとってポジティブに作用する大きなステップとなることでしょう。 しかし、他国で従業員を採用する場合、しかもそれが初めてであればなおさらのこと、最初の求人広告を掲載するまでに済ませておくべきたくさんの事前作業が存在します。 調査するべきトピックは多岐にわたります。たとえば、現地の採用プロセスや労働力全体の特徴などのほか、法定休暇やそのほかの福利厚生を含めた詳細なテーマなどです。
これから、グローバル従業員を採用する際に検討するべき最も重要な要素をいくつか見てみましょう。 お客様の会社は10の質問を通じて、国際採用プロセスに向けた準備が万全であることを確認する必要があります。
1. 事業法人設立に必要な手順は何か?
従業員を採用し始める前に、新しい従業員の給与支払い体制を整える必要があります。 ほとんどの国ではリモート給与支払い管理が禁止されているため、従業員を採用する国で事業法人を設立して、従業員への合法的な給与支払いを可能にする必要があります。 どのような法人構造を選択するかは、国ごとに大きく異なります。 一部の国では、事業法人の設立プロセスがあまりにも複雑で多くの時間を要する場合があります。
世界銀行によると、ベネズエラで事業を立ち上げるには最長で230日間かかります。 仮に、わずか数日で事業を立ち上げ可能な国で従業員の採用を開始予定であるとしても、正式に採用活動を開始するまでには時間をかけて、すべての要件を満たしていることを確認する必要があります。 たとえば、現地で生活している事業の代表者の確保、または現地での銀行口座の開設などが含まれます。
事業法人を設立するまでの事前作業は、採用プロセスにとって重大な手順です。 必ず、これにどういったことが含まれるのか理解しておきましょう。こうすることで、国際採用の検討事項に注意を向ける前に投資すべき時間と財務を正確に把握できるようになります。
2. 拡大先の国における労働力の実態はどのようなものか?
拡大先に検討している国の労働力の実態についても検討しておくべきでしょう。 これは、国内で採用する際に直面する潜在的な利点や課題を理解するのに役立ちます。労働市場には考慮すべき点がいくつか あります。
1つ目は、その労働市場の需給が逼迫または緩んでいるかという点です。 たとえば、日本の労働市場は需給が逼迫しており、 応募者1人に対する仕事の数は1.62となっています。 つまり、求職者は複数の採用オファーを抱えている可能性が高いため、お客様の会社に労働者が入社するよう説得するには通常以上の努力を費やさなくてはならないことを意味します。 需給の緩んだ労働市場では、より多くの応募者がお客様の会社のポストを狙うことになります。
もう1つの点は、検討中の国の労働力に求めるべき資格と求めるべきでない資格は何か考慮するということです。 その国にはどのような学校があり、お客様の分野で高い技能を誇る労働者がいるかどうか検討する必要があります。 一人ひとりの違いにまで配慮することはできません。しかし、こうした点をあらかじめ調査しておくことで、その国の人口の教育と経験に対する基本的な理解を得やすくなります。
3. 把握しておくべき文化的差異は何か?
これから採用を開始予定の国の文化についても、時間をかけて学びましょう。 なお、文化的ステレオタイプや一般的なイメージは、その文化の全体像を示すものではないという点に留意しておきましょう。 特定の国の候補者が全員同じように行動するものだと推測するべきではありません。 性格、宗教、そして経歴の違いから、従業員に対して抱いていた文化的ステレオタイプとはまったくかけ離れた人物像が見えてくる場合もあります。
経済のグローバル化により、特に都市部ではさほど多くの文化的障壁に直面することはありません。 それでも、お客様の会社の採用慣行、またその国で予定している事業の進め方に直接的に作用する文化的影響の有無を確認しておくと便利です。 可能であれば、国際採用時に考慮するべき文化的側面について現地の取引関係に相談してみましょう。
中には、雇用慣行に直接作用する文化的要素も存在します。 たとえば、一部の国では、会社が祝日または年次イベントを理由に事業を一時的に休業した場合でも従業員は休暇の支給を当然視する場合があります。 また、多額の年次ボーナスが習慣的となっている国では、適切に付与しなければ従業員の反感を買うか、離職につながるおそれもあります。
4. 報酬と給与支払い管理の仕組みは?
給与の設定と管理は、国際的に従業員を雇用する上で、より複雑な要素の1つです。重要な側面の 1つは、自国の通貨で従業員に対して支払う適切な金額を把握することです。 必ず、ベースラインとしての全国的またはローカルな最低賃金法ならびに残業代の支払い条件を把握しておきましょう。 また、団体交渉協約が適用されるかどうかも確認が必要です。 こうした要件以外にも、お客様の会社の所属業界における、さまざまなポストに関するローカルな給与支払い規範について調査しておきましょう。
基本給以外の報酬要件についても把握しておく必要があります。 例えば、国によっては、13か月目のボーナスや利益分配を義務 付けている場合があります。 そのほかの国では、ボーナスの支給が義務ではないものの、習慣として行われている場合があります。
従業員にいくら支払うべきかという点以外にも、給与支払い管理の方法を把握しておく必要があります。 つまり、源泉徴収制度または従量課税制度を用いる国では、どれだけの金額を所得税として天引きするべきか知っておく必要があります。 また、社会保障や年金制度のために一定額を天引きする必要があるかもしれません。
5. どのような法定福利厚生を提供する必要があるだろうか?
現地の従業員に法律上支給されるべき福利厚生、また雇用主としての競争力を保つために提供するべき習慣的福利厚生は何か、それぞれ把握しておきましょう。 次のような福利厚生を考慮する必要があるかもしれません。
- 休暇
- 祝日
- 病気休暇
- 育児休暇
- 介護休暇
- 健康保険
- 退職後の貯蓄プラン
一部の国の従業員は、交通費の補助および食券を支給される権利があります。 また、従業員は毎週一定期間の休憩を支給されるケースもあります。 ここで知っておくべき重要なことは、すべての国が従業員給付に関する独自の要件を持っているため、新入社員を雇用 する前に、これを徹底的に調査する必要があります。 なお、団体交渉協約によって、国際従業員にさらに充実した福利厚生を提供しなくてはならない場合もあるということに注意しておきましょう。
従業員に受給資格のある福利厚生を算段に入れておくことで、一人ひとりの従業員のコストが実際はどれくらいになるのか正確に把握しやすくなります。 この合計額が従業員の基本給を著しく上回るという事態が起こり得る国もあります。
6. 従わなくてはならない雇用に関する法律
法務面での検討事項には、報酬と福利厚生以外にも多数存在します。 展開先の国で採用および雇用慣行を司っている法律を見つけ出し、入念に調査しましょう。 たとえば、差別禁止慣行に従う必要があるかもしれません。 週間労働時間を一定の方法で編成したり、解雇を特定の方法で扱う必要もあるでしょう。 展開先の国の国民ではない人物を採用する場合、外国人労働者を採用するための雇用主向けの条件があるかもしれません。
ほとんどの企業は、展開先の国の法務専門家に相談して、雇用に関するあらゆる法律に確実に順守する必要があります。 コンプライアンス違反のリスクは、自分自身でプロセスをナビゲートしようとすると大きくなります。法律 に違反した場合、重い罰金やそれ以上の罰金が科される可能性があります。 従業員が正当に受給資格のある待遇や福利厚生を付与しなかった場合、訴訟問題に発展する場合もあります。
訴訟に発展しやすい国もあれば、紛争発生時には従業員に有利な判決を下しがちな国もあります。 このような国で活動する場合は、あらゆる雇用慣行において公明正大に対応し、可能な限り透明性を示すことが不可欠です。
7. コミュニケーションを図るのに通訳は必要か?
国際従業員を採用する前に、言語という重大なポイントを検討しておく必要があります。 これが、取るに足らない問題となる場合もあります。 しかし、お客様の会社の本拠地となる国の母国語と、採用する国の主たる言語が異なる場合は、採用プロセスの複雑さが増してしまいます。 もちろん、多言語に堪能であったり、お客様の会社が扱う母語を流ちょうに話すことのできる人物が見つかれば物事を簡素化できます。 しかし、こうしたケースは必ず起きるわけではありません。
他言語に堪能であり、お客様の事業と従業員の採用プロセスの確立を支援してくれる従業員を探してみましょう。 この場合、ビジネス文書の起草、求人広告の作成、そして応募者との第二言語によるコミュニケーションなどの仕事が伴います。 こうしたプロセスを円滑に進めるため、多くの企業では通訳を雇わなくてはならなくなります。
人材派遣会社を通じて採用する予定でない限り、面接中も通訳に同席してもらう必要があります。 国際採用における言語の障害は難しい問題ですが、対処の方法は存在します。
8. チームをリモートに管理する準備が整っているか?
次に自問したいのは、チームをリモートに管理する準備が整っているだろうかということです。 Entrepreneurのようなソースが指摘している通り、リモート管理はとても難しい任務であり、国際チームが本社との断絶を感じることのないように十分な量のコミュニケーションを必要とします。
オンサイトでチームを管理する方法や、自国のリモート 従業員を管理する方法さえ知っていても、海外採用のために考慮すべき ことを準備することはできません。 お客様の会社と従業員との地理的距離が広がり、言語または文化面での潜在的な差異が存在すればするほど、両者のギャップを埋めるのは難しくなります。
採用を始める前にリモート管理について学ぶ時間を設け、新しい従業員の入社プロセスを始めて早々に困ることにならないようにしましょう。 学習曲線はあるものの、ある程度のベストプラクティスを今学んでおくことで将来に向けて準備できます。
9. どのような採用慣行を利用するべきか?
また、海外の従業員の採用 方法も理解する必要があります。 自国で行なってきた採用慣行が別の国でも奏功するとは限りません。 以下の質問を検討して、事業拡大を目指す国で従業員を採用するベストプラクティスを見つけましょう。
- 人材派遣会社を通じて従業員を採用するのは一般的か?
- 新卒者を採用するための確立された方法は存在するのか?
- 人々が求人広告を見つけるために利用している出版物、ソーシャルネットワーク、またはWebサイトはどれか?
- 採用イベントの主催や参加は一般的か?
- 標準的な求人応募パッケージの内容は?
- 雇用主が差別的慣行を避けるための禁止事項はあるか?
一部のケースでは、他国の採用慣行が自社の慣れ親しんだやり方によく似ていることに気づく場合があります。 あるいは、まったく想像さえしていなかった形で異なる慣行もあります。 例えば、総合的な身体的および心理的検査 の実施は、仕事が身体活動を伴うかどうかにかかわらず、一部のラテンアメリカ諸国では採用プロセスの標準的な部分です。
つまり、国際採用プロセスおよび選定は、国内の従業員を対象に利用していた採用プロセスとは異なる可能性があるため、展開先の国に合わせて採用戦略をカスタマイズすることが大事です。
10. 雇用代行業者と業務提携した方がよいか?
これまでのお話から、国際採用は非常に入り組んだプロセスであるということがお分かりいただけるはずです。 事業法人の設立に伴う時間と経費、順守しなくてはならない雇用に関する法律、そして給与支払い管理に伴う複雑さを考慮した場合、もっと楽な方法はないものかと思うこともあるかもしれません。 幸い、雇用代行業者(EOR)と業務提携を行うことで、このプロセスを大幅に簡素化できます。
雇用代行業者はユニークなグローバル採用ソリューションを提供できます。 雇用代行業者は、展開先の国ですでに事業法人を設立済みであり、さらに、現地の雇用に関する法律や人事慣行に関する専門知識を備えています。 国際従業員の採用に雇用代行業者を利用することで、通常であれば会社にとって最大の問題となりかねない、国際採用のさまざまな側面をアウトソーシングできます。 国際従業員は、実質的にはお客様の会社のために働いているものの、その給与支払い管理は雇用代行業者が担当します。
暫定的に国内に自分のビジネスエンティティを設定する予定がある場合は、このオプションをEORオプションと一緒に検討 し、会社にとってより理にかなったものを決定します。 国際拡大に向けた総合的な計画に左右されるものの、多くの企業にとっては雇用代行業者との業務提携が圧倒的に優れた選択肢となります。
Globalization Partnersを雇用代行業者に選んで国際的チームを構築する
国際従業員の採用を始める決断をされたら、Globalization Partnersがお客様のグローバル拡大プロセスを合理化できます。 世界187ヶ国に事業法人を構えるGlobalization Partnersは、お客様が採用を予定している国で活動している可能性が高く、現地の雇用に関する法律や慣行について広範な知識を持ち合わせている可能性が高いでしょう。
Globalization Partnersを雇用代行業者に選ぶことで、支社または子会社を設立することなく直ちに採用を開始できます。 また、給与支払い管理と法令順守も当社に任せることができるため、お客様は国際チームの管理に集中できます。 まず、提案をリクエスト し、Globalization Partnersがどのようにグローバル化を支援できるかについての詳細をご覧ください。
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